日溜まりの憂鬱
「買い物ならライフマーケットですればいいのに」

　ライフマーケットはかつての職場の名称だ。「こっちのほうが近いから、つい」と適当にかわす。すると聞いてもいないのに、

「ちょっと風邪っぽくて薬買いに来たんだ。そのついでに偵察。ほんと私、職業病だね」

　首を竦ませる野田さんに「仕事熱心だね」と微笑を向けた。速やかにこの場から立ち去りたい。手首を持ち上げてわざとらしく時刻を確認しようとしたが一足遅かった。

「ねえねえ、お茶飲んで行こうよ」

「あ、でも」

「３０分くらい時間あるでしょ？　ちょっと相談があるんだよね。ね？」

「相談？　私に？」

「そうなのよ」

　一体何の相談なのか見当もつかない。が、そう言われてしまえば断りづらかった。

「お会計済ませてくるから先に行ってて」

「りょーかーい」

―――風邪っぽいならさっさと帰ればいいのに。

　野田さんの背中にぼそりと呟いた。
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