日溜まりの憂鬱
 面接から二日後、菜穂は久しぶりにデパートを訪れた。
 長らく離職していたため、職場で着る適当な服がなかったのだ。動きやすいパンツと足への負担がかかりづらい靴を購入した。
 なるべく安価なものを選んだが、それでも1万弱の出費は少し痛い。ただ、買い物をしながら思ったが、ひとたび外に出ると、欲しいものがたくさんあった。
 
 修也のお給料でやりくりしているため、節約重視でやって来た。
 けれど菜穂が働くことによって、生活が潤うのは経済的にも安心だし、貯金だって出来る。念願のマイホームだって手が届くかもしれない。

 色々思いを馳せるうちに、あれほど不安だった仕事が、少しだけ楽しみになって来た。

「今日は随分と機嫌がいいんだね」

 その晩、修也に指摘され照れ笑いを浮かべた菜穂は「わかる? 面接前は不安のほうが大きかったんだけど、前向きに考えるうちに楽しみになって来たの」

「そうなんだ。前向きに考えられるようになったんだね」

「うん。働き始めたら修也のお小遣いも増やさなきゃね」

「お、それは嬉しいかも」

 その日は久しぶりに安眠できた。
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