日溜まりの憂鬱
 ベランダ側の窓を開けると、ふわりと風が舞い込みレースのカーテンを大きく膨らませた。
 途端に鼻の奥が刺激され、くしゅんと大きなくしゃみが落ちる。
 毎年二月の終わりくらいから鼻がぐずつき、目が痒くなる。春の訪れを知るきっかけはいつも花粉症だ。

 一度刺激されると発作のようにくしゃみが止まらなくなる。今更のように窓を閉めて、薬箱から鼻炎薬を取り出した。

 外はまだまだ寒いのに、春はすぐそこまで近付いている。
 浄水器から注がれた水をグラスで受け止め、カプセルを口の中に放り込む。ぐいっとグラスを呷って飲み下し、濡れた口元を手の甲で拭った。

 火曜日の午後1時。
 テレビではどのチャンネルもお昼のワイドショーばかりだ。芸人コメンテーターが、ウケ狙いなのか的外れなコメントで滑っていた。
 何ひとつ面白くないけれど、ぼんやり眺めてしまう。
 空気の入れ替えはひとまず諦めよう。菜穂はソファにごろりと横になる。眠いわけでも、怠いわけでもなく、ただ、心が重い。
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