レムナント
用意されたドレスに着替えた。
深い紺色のロングドレスでとてもシンプルなデザインだった。
ソフィアがアリスのブロンドの髪を一つに結い上げ、少しお化粧もした。
「綺麗ですよ、アリス様。」
鏡に映る自分は不安だらけの顔をしていた。
でも、ここまで来たらやるしかない。
アリスはパンっと頬に手を当てた。
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コンコン
ドアがノックされて、キースがやって来た。
「おはようございます、アリス様。では、参りましょうか。」
「はい。」
シドの部屋があるという中央の塔へ向かった。
豪華な装飾が施された大きな扉の前でキースは足を止めた。
「こちらが、シド殿下の執務室になります。」
キースがドアをノックした。
ドクンドクンと胸から飛び出すんじゃないかと思うくらい心臓が大きく跳ねた。
「し、失礼します…」
中に入ると、机に座り用紙に何か書いている男性が1人。
この人が、この国の王子、シド殿下…
髪は銀髪で、すっと通った鼻と白い肌
ぱっちりとした目に長いまつ毛。
そして羽ペンを置くとアリスに視線を向けた。
王子様ってあんなにかっこいい人なの…
アリスは整ったシドの容姿を見て思わず頬を赤くした。
「…つ、」
シドはアリスの顔を見ると瞳を細め、その鋭い視線をキースに向けた。
キースはシドが睨みつけている事に気が付いているが、全く気にせずアリスをシドの前に出した。
「本日よりアランと共にシド殿下の側近となるアリスです。」
キースに紹介されて、アリスも一歩出て挨拶をした。
「アリスと申します。宜しくお願いします。」
シドは暫くアリスの顔を見ると、再び羽ペンを手にした。
「ああ、頼む。」
それだけ言うと、あとは何も言わずにその場に沈黙が流れた。