レムナント

「では、アリスには今からアランに付いてさっそく執務に取り掛かってもらいます。」

キースの言葉にシドは何も答えなかった。

「アリス、いきましょうか。」

「は、はい…」


部屋を出ると、アリスはどっと疲れた気がした。

「無事に挨拶は終わりました。では、アリスに働いてもらう執務室に行きましょうか。」


「あの…シド殿下は、何か怒ってらっしゃいましたか?私、何か粗相を…」

あまりにも短い挨拶に、シドのあの冷たい態度。

何か怒らせてしまったのではないかとアリスは気が気ではなかった。


「いえいえ。殿下はいつもあんな感じです。そのうち慣れますよ。」


いつもあんな感じ…

アリスは先が思いやられた。

シドの部屋からさほど離れていない部屋に着いた。

中に入ると、たくさんの本棚の前で、一冊の本を手にしている男性がいた。


「アラン、アリスを連れて来た。」


アランは振り返るとアリスを見て少し驚いたような顔をした。


「キースさん、またよく見つけて来ましたね。」


アランは黒髪で、背が高く、愛嬌のある容姿をしている。

シドよりずっと話しやすい雰囲気にアリスは少しほっとした。


「アランだ。宜しくな。」




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