レムナント
馬車に乗ると、キースは手袋を外しふぅと息を吐いた。
「…どうでしたか。」
横に乗っている召使いのアドワンがキースの顔色を伺いながら聞いた。
「ああ、大丈夫だ。アリス殿に決まりだ。」
キースは窓の外か少し先に聳え立つ城を眺めた。
「今度こそ、上手くやってもらわなければ…」
そう言ってキースは瞳を細めた。
ー1週間後ー
「…奥様、王宮より馬車が参りました。」
召使いの言葉でアリスはカバンを持って部屋を後にした。
キースが訪れてから一週間。
本当に自分が王宮へ行くのか半信半疑だった。
しかし、今日本当に城から馬車が迎えに来た。
「じゃあね、アリス。しっかりやるのよ。」
ハンカチを口に当て、目に涙を浮かべて言う母に、アリスは目を細くした。
自分がよく話も聞かずに決めたくせに。。
まぁ、戦場に行くわけじゃあるまいし、私が使い物にならないと分かったら家に返されるだろう。
やるしかない!
アリスは意気込んで馬車に乗り込んだ。