レムナント
「キース様とアラン様もお久しぶりね。」
「ご無沙汰しています。」
どうやらキースとアランも顔見知りのようだ。
「賑わっていますわね。一曲踊って頂けますか。」
そう言ってローズはシドに手を差し出した。
「…生憎、公式の場以外では踊らない主義ですので、失礼します。」
シドはそう言うと、アリスの腕を掴んで逃げるようにその場を後にした。
その様子を見たキースとアランは顔を見合わせた。
ローズは去っていくシドとその隣のアリスを見て瞳を細めた。
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「で、殿下。よかったのですか?」
腕を引かれたままのアリスはシドに問いかけた。
ダンスに誘われていたのに、あんなにアッサリ断ってしまって。
シドは立ち止まると、アリスの腕を離した。
「…戻った方がいいのでは。。?」
「いいんだ。お前は俺の側から…」
「きゃー!シド様よ!」
仮面を外したままだったシドの周りに女性達が集まった。
「…わっ。」
押し寄せた女性達にアリスはよろけた。
「シド様が仮面舞踏会に参加なさるなんて珍しい」
「是非私と踊って下さい」
アリスは人混みに飲まれシドから離れてしまった。
シド様、女性達からこんなに人気があるんだ…
姿が見えなくなるくらい女性達に囲まれたシドを見てアリスは驚いた。
どうしよう…離れるなと言われたけどこれじゃあ戻れないし。。
ふと、テーブルに並ぶたくさんの料理に目が止まり、そういえば昼から何も食べていなかったアリスは途端にお腹が空いた。
「ちょっとくらい離れても良いわよね。」
アリスは芸術品のように綺麗に作られたケーキに手を伸ばした。