レムナント
「でも寝る時間ですよ?さぁ、一緒にお部屋までいきましょう。」
「やだやだやだーー!!」
足をバタバタさせて嫌がるルーンをアリスは抱き上げた。
大きな瞳から涙が溢れ、長いまつ毛に水滴がついた。
「またマリアがあちこち探しているわね。」
執務室を出てルーンの部屋に向かっていると、前方からいつものように慌てているマリアが走って来た。
「…あ!ルーン様やっぱりアリス様の所に!」
マリアは目の前までくると、ゼェゼェ息を切らしていた。
「ルーン様、お部屋に戻りましょう。」
何故かマリアは小声でルーンに言った。
「どうしたんですか?」
ルーンが見つかったのにマリアは浮かない表情をした。
「いや…それが。。」
「マリア!!」
すると、背後から女の人の怒鳴り声が聞こえた。
マリアはビクッと肩を震わせた。
やって来たのは、髪を後ろでお団子に結んでおり眼鏡をかけキッチリとした格好をした夫人が怖い顔をしてこちらに向かって来た。
「まだお休みになられてないのですか!とっくに眠る時間ですよ!!」
女性はマリアにキツく言った。
「も、申し訳ありません。ようやく見つかりました、シャロン様。」
シャロンと呼ばれた夫人はルーンを抱いているアリスをギロリと見た。
「あら、貴方はどなたなの。」
「あ…シド様の側近をしております、アリスと申します。」
シャロンは眼鏡をかけ直しアリスをまじまじと見つめた。
「どうして殿下の側近の方がルーン様を?さ、ルーン様、お部屋に戻りますよ。」
ルーンは首を振るとアリスにしがみついた。
「シャロン様、後は私が寝かしつけをしますから…」
「いーえ!マリア、あなたはルーン様を甘やかしすぎです!ここ一週間あなたがルーン様のお世話するところを見させてもらいましたが、全くもってなっておりません!これからは私がルーン様をご指導します。」
耳が痛くなりそうなくらい金切声を上げて言うシャロンにアリスも何も唖然とした。
「さぁ、ルーン様こちらへ来るのです」
そう言うと無理やりアリスからルーンを引き離した。
マリアはアリスに小さく頭を下げると慌ててシャロン夫人の後を追って行った。