レムナント

アリスは今夜仕上がった書簡を持ってシドの部屋は向かった。

もう夜も遅いがいつも通りシドは机に向かっていた。

「こちらにサインをお願いします。」

シドはアリスから受け取ると目を通し始めた。

机の脇にはもう乾いてしまっているサンドウィッチが置いたままだ。

お昼ご飯、食べなかったんだ…

アリスはシドにコーヒーを入れて出した。


「少しは休んでください。」

シドはアリスを見上げると、何も言わずにコーヒーを一口飲んだ。

「…ルーンは。」

珍しく、仕事以外でシドがアリスに話しかけた。

アリスはそんな些細な事でも少し驚いた。


「ルーン様はもうお休みになっています。」


「…そうか。今日はルーンの顔を見なかったな。」


相変わらず表情は変えないシドだが、どこか寂しそうに見えた。


「殿下、明日はルーン様と王宮のお庭を散歩されてはどうですか?」

アリスの提案にシドはコーヒーカップを置き眉を顰めた。


「なんだ、突然。」


「一時間程どうでしょう?明日は外出の用もありませんし、ルーン様も喜びます。」

シドは暫く黙ると、机に積み上がっている書類に手を伸ばした。

「アリスも付いてこい。」

「え?」

「明日10時にここへルーンと一緒に来い。」

アリスは何で自分も?と疑問に思ったがこれ以上何か言うと辞めると言われそうだった。


「分かりました。。では明日。」

アリスは頭を下げるとシドの部屋を後にした。


< 64 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop