レムナント
「殿下、ルーン様は今はお勉強の時間です。私に一言申してからにして下さい。」
シド相手にもキツイ口調のシャロン夫人。
シドはルーンを抱き上げるとシャロン夫人の方を見た。
「…ルーンは毎日十分過ぎるほど勉強はしている。後少ししたら戻るから下がれ。」
シドの言葉にシャロンはこほんと咳払いをした。
「お言葉ですが殿下。ルーン様の生活は乱れておりました。これからは私が管理させて頂きます。」
シドはシャロンの後ろで小さくなっているマリアを見た。
「…ルーンの世話は侍女一人で十分なはずだ。シャロン夫人。」
「それはありえません。ルーン様は王位継承者です。お世話係が侍女一人だなんて!」
キーキー声を上げるシャロンにシドは溜息をついた。
「さ、ルーン様。そろそろお部屋に戻りましょう。」
シャロンが手を差し出すとルーンはそっぽを向いて、シドの胸に顔を埋めた。
「今日はお勉強しない!」
ルーンはシドの腕から降りると、アリスの元へ走って来た。
「ルーン様!」
ルーンはアリスに抱きつくとドレスの裾をギュッと握りしめた。
「…もういい、シャロン夫人。今日は勉強はなしだ。」
シドはシャロンをキツく睨みながら言うと流石のシャロンも言い返しはしなかった。
「分かりました。」
そう言ってシャロンはアリスをキッと睨みつけるとその場から去って行った。
アリスはしがみついてくるルーンを抱き上げた。
「…ルーンを私の部屋に。」
そう言ってシドも先に王宮の中へ戻って行った。