婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~

奈子は宗一郎のことが好きだった。

たとえレセプションパーティのような結婚披露宴でも、奈子だけは、その日から永遠に宗一郎を愛していたかった。

「今さら俺を好きじゃなくなったとは言わせない」

宗一郎は奈子の腕を決して放そうとしなかった。
奈子は耐えきれなくなって、思わず宗一郎を見上げていた。

「まだ好きだから困ってるんですよ、バカ!」

涙が頬を伝う。

この恋をやめられたなら、どんなに簡単だっただろう。
でも、もう取り消せない。

奈子はこの先もずっと、宗一郎を永遠に愛し続けるのだ。

宗一郎が奈子を引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
ギュッと強く抱きしめられる。

押しつけられた頬に速い鼓動が伝わってきて、宗一郎が本当に、必死になって奈子を引き留めていたのだと気づく。

そのせいで、奈子の涙は止まらなくなった。
口を引き結び、宗一郎の胸に顔をうずめる。

もうひとりきりで泣いているのではない。
宗一郎がいて、奈子を放さないでいてくれる。

きっと奈子はどんな謝罪や慰めより、本当はずっと、ただ宗一郎にそうしてほしかったのだ。

しばらくの間好きなだけ泣いた奈子は、宗一郎の背中にしがみついて、静かにはなをすすっていた。
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