婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~

「奈子が初めて俺のところへ来てくれたとき、俺はきみを大事にすると約束した」

宗一郎が奈子を抱き上げた。
玄関から遠ざけるように奈子をリビングの中央まで連れて戻り、ソファの奥のほうへ下ろす。

それから背もたれと奈子の隙間にぐいぐいと体を押し込めてきた。
長い脚の間に奈子を座らせて、まなじりにキスをする。

「それなのに、ひとりで待たせてばかりでごめん。本当に後悔したよ、取り返しがつかなくなるところだった」

宗一郎が奈子を腕に閉じ込め、懇願するようにささやく。

「俺はきみを失ったら息もできない。どうか奈子のそばにいさせてほしい」

奈子はふと、もう二度と宗一郎を疑わないでいられると知った。

確かな予感がする。
宗一郎はきっとこのまま、奈子を放さないでいてくれる。

「いいですよ」

奈子は高慢につぶやいた。
それなのにまるで今にも泣きだしそうに聞こえてしまって、慌てて小さくはなをすする。

奈子はツンと顎を上げて振り返った。
なるべく偉そうに宗一郎を見つめる。

「宗一郎さんがちょっと笑ってキスをしたら、私って、すぐにあなたを好きになっちゃうみたいなので」

宗一郎がちょっと笑う。
そして、奈子にキスをする。

「頼むよ、奈子。ずっと俺に恋をしていてくれ」

また涙があふれてくる。

宗一郎がそばにいる。
怖いことなんてなにひとつないみたいに、奈子を抱きしめている。

気づくと奈子は宗一郎の腕の中で、ようやく声をあげて泣いていた。
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