婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
「悠には俺から連絡するよ、鬼灯製薬の開発メンバーを説得してもらう。きみは準備に集中してくれればいい」
「内閣府にも根回しがいるだろ」
「チームに外務省の首席事務官がいたはずだ。冷を頼ってみる」
京が顔をしかめてつぶやいた。
「引き受けるかな。あいつ、鬼灯に関わりたくないから公務員になったのに」
宗一郎は心配していなかった。
「べつに、違法なことをさせるわけじゃない。きっとうなずくよ」
京がソファにぐったりと体を預け、宗一郎を恨めしそうに見た。
「そうだな、なんでもあんたの思い通りになるよ」
宗一郎が満足そうにほほ笑む。
わかっているのなら話は早い。
「ついでにひとつ、きみに頼みたいことがある」
京がパッと体を起こして眉をひそめた。
宗一郎から無理難題を課されることに慣れているぶん、反応がすばやい。
「なんだよ、俺は準備に集中すればいいって言わなかったか」
訝しそうに目を細める。
宗一郎は悪魔のように美しく笑った。
「簡単なことだよ。俺を開発者会議に登壇させてほしい」
「登壇?」
京が小さく首をかしげた。