婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~

「悠には俺から連絡するよ、鬼灯製薬の開発メンバーを説得してもらう。きみは準備に集中してくれればいい」

「内閣府にも根回しがいるだろ」

「チームに外務省の首席事務官がいたはずだ。冷を頼ってみる」

京が顔をしかめてつぶやいた。

「引き受けるかな。あいつ、鬼灯に関わりたくないから公務員になったのに」

宗一郎は心配していなかった。

「べつに、違法なことをさせるわけじゃない。きっとうなずくよ」

京がソファにぐったりと体を預け、宗一郎を恨めしそうに見た。

「そうだな、なんでもあんたの思い通りになるよ」

宗一郎が満足そうにほほ笑む。
わかっているのなら話は早い。

「ついでにひとつ、きみに頼みたいことがある」

京がパッと体を起こして眉をひそめた。
宗一郎から無理難題を課されることに慣れているぶん、反応がすばやい。

「なんだよ、俺は準備に集中すればいいって言わなかったか」

訝しそうに目を細める。
宗一郎は悪魔のように美しく笑った。

「簡単なことだよ。俺を開発者会議に登壇させてほしい」

「登壇?」

京が小さく首をかしげた。
< 145 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop