婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
真っすぐな鼻梁とアーモンド型の目をした宗一郎は、窓から差す日の光で濃い陰影ができるほどはっきりした顔立ちで、黒い髪をオールバックにするといつも以上にハンサムだ。
胸がキュッとしめつけられ、奈子は顔をしかめた。
「宗一郎さん」
奈子の卵型の輪郭をたどる指先に手をかけると、宗一郎が怪訝そうに片眉を上げる。
奈子は祈るようにささやいた。
「今から婚前契約書に書き足したいことがあるんです」
「ああ、そのことなら」
宗一郎はもう一度奈子の顎を掴んでキスをし、悪魔のように美しく笑った。
「顧問弁護士に伝えるといい。俺の要求はすべて承諾してもらっている。きみのどんな望みでも叶えるよ」
奈子がなにを願うのか、宗一郎は聞こうともしない。
才能と家柄、富と権力と優れた容姿を持つ鬼灯宗一郎なら、大抵のことは思い通りになるからだ。
奈子を妻にすることだって簡単だった。
ふたりはこれから、契約によって結ばれる。
「さあ、行こうか」
花嫁は小さくうなずいて、差し出された手を取った。