婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
アボカドとナッツのサラダ、海老とジャガイモのブルスケッタ、炙りホタテのカルパッチョ、イサキのアクアパッツァに、スモークサーモンのレモンクリームパスタと、次々に完成する料理でダイニングテーブルが埋め尽くされていく。
ときどきは、奈子より手際がいいことを認めなければならなかった。
それぞれのメニューを口に入れるたび目を輝かせてたっぷりと味わい、ついに奈子は悟る。
宗一郎の欠点なんて、探そうとするのは理にかなわない。
アイランドキッチンにふたりで並んで後片付けをする頃、奈子はほとんど落ち込んでいた。
「宗一郎さんって、料理もできるんですね」
奈子が洗ったお皿を受け取って、宗一郎が首を傾げる。
「合格?」
「百点です」
「それはよかった。俺もきみの前ではかっこつけたい」
奈子はムッとして眉を寄せた。
そんなのうそだ。
かっこつけなくたってかっこいいくせに。
「なんかずるい」
理不尽に拗ねる奈子を見下ろして、宗一郎が眩しそうに目を細める。
「俺は奈子の味付けが好きだよ、刺激的で」
奈子の頬はパッと熱くなった。