婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~

たしかに、奈子が味付けをしたライムスープとサラダのドレッシングは、ふたりがつい笑ってしまうほどスパイシーだった。
でも味は悪くなかったし、結局は食べきったのだ。

奈子はほかの残った料理を詰めた保存容器を腕に抱え、逃げるように宗一郎に背を向けた。

「緊張しちゃったんです。もともと辛いものが好きだし、今日は宗一郎さんが、食べるって、思ったから……」

どんどん小声になっていく。
宗一郎が追いかけてきて、両手が塞がっている奈子の代わりに冷蔵庫のドアを開けた。

「おいしかったよ。俺はきみと結婚したから、これから毎日でも奈子の手料理を食べられると思ったらうれしい。また作ってくれるだろ?」

優しく見つめられ、奈子はなにも言い返せなくなった。
ネジで動く人形のようにこくりとうなずく。

宗一郎がそっと手を伸ばして奈子の長い髪を耳にかけ、赤くなった頬をあらわにした。

「それで、俺を好きになった?」

「もう、にやにやしないで!」

奈子が怒って宗一郎を肘で小突く。
宗一郎は笑って奈子を抱きとめ、仕返しにキスをした。
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