婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~

宗一郎が呆れたようにつぶやく。

「お前たちふたりが並んでると目立ちすぎるからだろ。子どもの頃から、パーティに出席すれば面倒ばかり起こす」

「なるほど、それもある」

悠成はいたずらっぽく片眉を上げた。
奈子に向き直って、にっこりと笑いかける。

「俺と京は双子みたいに育ったんだ。ここには俺しかいないけど、家族が増えてみんな喜んでるよ。ありがちなことですが、兄がなにを考えているのかわからなくなったらお気軽にご相談を」

奈子は眉を下げてほほ笑み返した。
かなり魅力的な申し出だ。

「ありがとうございます、きっと頼りにします」

規格外な鬼灯家に嫁いで気おくれすることもあるけれど、こうやって家族に受け入れてもらえると、宗一郎のそばにいていいんだと思える。

政略の上に成り立っているとしても、この結婚は正しかったと。

宗一郎がふと奈子の手を握る。
見上げると、宗一郎は深刻そうに切りだした。

「でも奈子はいちばんに俺を頼るべきだよ。わからなくなったら、(ゆう)じゃなくて俺のところにくるんだ」

筋の通らない忠告だ。
奈子は目をまたたいた。

「宗一郎さんの考えてること、教えてくれるんですか?」

「きみは俺をなんだと思ってる」

悠成がからかうように口を挟んだ。

「ははあ、前言撤回だな。兄貴が女の子にそこまで必死になるとは知らなかった」
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