婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
背中をなぞる指先が、下着のふちに行き当たった。
途端に締めつけがなくなる。
「宗一郎さん!」
「ん、あとちょっと」
器用な手が片方の胸をそっと掴んだ。
奈子は慌てて口を引き結ぶ。
宗一郎の膝が、内ももをかすめるように脚の間に割り入る。
ミモレ丈の裾がずり上がって、奈子の小さな膝をあらわにした。
唇を押しあてられた肌が熱くなり、宗一郎の手の下で胸の先が硬く尖っていく。
奈子は宗一郎の腕にしがみついた。
そうしていないと、今にも正気を手放しそうだ。
宗一郎が奈子を抱き寄せてスカートの裾に指をかけたとき、ふたりの間で警告音が鳴りだした。
ためらいのなかった宗一郎の手がピタリと止まる。
宗一郎のスーツのポケットの中で、スマートフォンが着信を告げていた。
コールは三回で途切れ、玄関が静まり返る。
奈子はほんの少し息を乱したまま、宗一郎と目を見合わせた。
宗一郎がため息をついて、ポケットからスマホを取り出す。
ちらりと画面を確認し、感心したように片眉を上げた。
「さすがだな。なにもかもバレてる」
きっと佐竹だ。
奈子は恥ずかしくなって両手で顔を覆った。
「もう佐竹さんに会えない」
ジャケットは片方の肩からずり落ちて腕にまとわりつき、ブラウスはすっかりぐしゃぐしゃだし、スカートは乱れて膝が見えている。