堅物な和菓子王子は一途に愛を貫く
若旦那におはぎの包みを手渡して、丁重にお詫びをする。
時計を見ると、もう六時半だ。若旦那が来てから一時間以上も経っている。
「変なことに巻き込んでしまって本当にすみません。こんな時間になってしまって、大丈夫ですか?」
小さくなって詫びる彩芽に、若旦那は笑いかけてくれた。
「いや、こちらこそ。友人が突然迷惑をかけて申し訳なかった。変わったところがあるけど、あいつは真面目ないいやつやから許してやって」
代金を払おうとする若旦那と少し揉めたが、最後は「ありがとう」とおはぎを受け取って帰ってくれた。
七時の閉店を迎えても祖母は帰ってこない。
帰ってくるまで待ちたかったが、「はよ帰さな、じいちゃんが叱られる」と、祖父にホレホレと店を出されてしまった。
仕方がないので、明日会社に差し入れるためのおはぎを抱えて石畳の道を帰る。
どういう話の流れになったのか見当もつかない。しかもどこに行ったというのだ。困ったことにならなければいいけど。
厳しい顔のタロウさんを思い出して、ため息をついた。