堅物な和菓子王子は一途に愛を貫く

会議を遅らせることはできない。
そこからは、ひたすら資料を作成した。会議まであと3時間。コピーの時間も必要なので、2時間半で仕上げなければならない。

グラフを引っ張てきて、データを参照して…

一度作った資料なので、考える必要がないのが救いだ。彩芽は必死でパソコンに向かった。

12時15分、美鈴さんに確認してもらって、無事に資料を作成し終える。

走ってコピー室に行き、猛烈なスピードでコピー設定をする。スタートボタンをバシッと押して、お願い頑張って!とコピー機を応援した。

12時50分、出来立てホヤホヤの資料を持って、会議室に走る。

会議の出席者はほとんどの人が到着済みだ。美鈴さんと手分けして配り、会議5分前に全ての作業が終了した。

「それでは、会議を始めさせていただきます…」

結城さんの声を聞いたとき、安堵のあまり彩芽は座り込みそうになった。

「飲み物を配るのは私と百合ちゃんでするから。彩芽ちゃんは、お昼ご飯を取ってきて。本当にお疲れさまでした」

美鈴さんが、優しく声をかけてくれた。
食欲は全くなかったが、とにかく職場を離れたい。

近所のコーヒーショップでサンドイッチとコーヒーを頼み、彩芽は深く深くため息を吐いた。

どうしてこんなことになってしまうのだろう。新人の指導はこんなにも難しいものなのか。
百合ちゃんのことを嫌いになる前に、なんとかしないといけない。

さっき百合ちゃんを怒鳴りそうになった。そのことが心底怖かった。

泣きそうな百合ちゃんの顔が思い浮かぶ。でも、こっちも泣きたいよ…

彩芽はこれ以上幸せが逃げないように、ため息をグッと堪えた。

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