堅物な和菓子王子は一途に愛を貫く
退室した後、専務と常務にもお茶を出し、自分の仕事に戻る。
仕事のスイッチが入った美鈴さんから仕事を振り分けられ、彩芽もヨシっと気合を入れて取り掛かった。
年度初めのソワソワした空気が社内全体に漂っていて、いまいち仕事に集中しきれなかったが、定時三十分を過ぎたあたりで、無事に今日の分の仕事が終わる。
明日は土曜日。仕事が休みなので、来週の仕事の確認をしてから席を立った。
ちょうど仕事が終わった美鈴さんと、そろって駅に向かう。
「彩芽ちゃんはこの日曜日も、おばあ様のお手伝い?」
「はい。今は観光シーズンでお客様も多い時期なので」
「偉いわねぇ。お休みの日も仕事なんて」
感心したように言われるが、大変なのは主婦でありママである美鈴さんの方だ。
「美鈴さんこそ、この日曜日は翔君の小学校の入学式ですよね」
「そうだった!私も大変やったわ」
思い出したように言うのが、美鈴さんらしい。
「がんばってくださいね。月曜日は〝おはぎ〟持ってきますから」
「わーい!彩芽ちゃんのおばあ様のおはぎが食べられるなら頑張る!」
子どものように喜ぶ美鈴さんを激励し、手を振って別れた。