堅物な和菓子王子は一途に愛を貫く

会場は、溢れんばかりの人で賑わっていた。彩芽には知り合いがいないので、キョロキョロと志乃ちゃんを探す。

「彩芽さん!」

声の方向を振り返ると、クラシカルなドレスを着た百合ちゃんがいた。

「彩芽さん、綺麗!」

いやいや、あなた…

元々可愛い子猫のような百合ちゃんだが、最近は大人っぽくなりとても綺麗になった。今日は、上品な薄紫色のドレスがとても似合っている。

「百合ちゃんの方がずっと綺麗よ。ドレスよく似合ってる」

「ありがとうございます」
頬を染めて、百合ちゃんは微笑んだ。

「婚約者の方を紹介したいんですけど…」

百合ちゃんが周りを見渡して、あっ、あそこですと指を指した。

久しぶりに見るタロちゃんだ。

黒紋付の羽織袴で、いつも以上にオーラがすごい。横にいる若い男性も同じ格好だが、タロちゃんだけが浮き上がって見えた。

タロちゃんが彩芽に気づき、まっすぐにこちらを見る。

ざわざわとした会場の音が一瞬聞こえなくなり、この空間にタロちゃんと彩芽だけしかいないように感じられた。

会いたくて、会いたくて、恋焦がれたタロちゃん。

グッとこみ上げるものがあり、彩芽は慌てて瞬きをした。


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