堅物な和菓子王子は一途に愛を貫く

ロビーには人はまばらで、彩芽は隅のほうにあるソファーに座り、気持ちが落ち着くのを待った。

最近やたらと涙腺が弱い。油断するとすぐに涙が出る。

タロちゃんと百合ちゃんの結婚発表を見るべきかどうか悩んだが、会場で泣き出してしまったら最悪だ。それにそこまで自虐的になる必要はないと、自分を甘やかすことにした。

目を閉じると、さっきの祖母の姿が思い浮かぶ。

やっぱり、来てよかった。

タロちゃんの凛々しい姿を見ることができたのも、いい思い出になる。

彩芽は静かに微笑んだ。


ガヤガヤと賑やかな声が聞こえだす。彩芽は、ハッと意識を取り戻した。

いけない!こんなところで眠ってしまうなんて。

パーティーは終わったらしく、ロビーに人が増え始めている。彩芽は足早に化粧室に向かった。

鏡に映った顔は、思ったより化粧崩れもなく、見られないほどではなかった。

さすがプロにしてもらっただけのことはある。

さあ、祖母を連れて帰らなくては。彩芽の一番大事な仕事はそれだ。


化粧室を出ると、彩芽を待ち受けていたかのように、目の前に人が立ちふさがった。

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