今日から騎士団長の愛娘!?~虐げられていた悪役幼女ですが、最強パパはわたしにメロメロです~
「なに、これから気を付けてくれればいい。さぁ、気を取り直して入場しよう」
 しょんぼりと肩を縮めるリリーの頭に抱き上げるのと逆の手をポンッと当てて、ふわふわとした亜麻色の髪を撫でながら告げる。
「うんっ! これからどうしてもうずうずしちゃった時は、パパの手を握って走ることにするね!」
 リリーがはにかんだ笑顔で返した可愛すぎる答えに、胸の奥が温かに熱を持つ。
「ああ、ぜひそうしてくれ」
 三十二年の人生で、これほどに心満たされ、充実した時間を過ごしたことがあっただろうか。
 俺は僅か十七歳、史上最年少で騎士団長に就任し、その直後から戦いに明け暮れた。知略を巡らせ、力でもって敵対する近隣諸国を捻じ伏せて、ユーベルグルク王国は大陸最強の地位を確固たるものにした。ここ十年は大きな戦いもなく、安寧が続いている。
 当時も今も、ユーベルグルク王国の平和を願う心は同じ。しかし、戦火の混乱の中にあった当時より、小さなリリーを腕に抱いた今の方が平和のありがたみを実感している。
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