今日から騎士団長の愛娘!?～虐げられていた悪役幼女ですが、最強パパはわたしにメロメロです～

『ゥ゛オロミャーーゴ(ぬぬぬっ！　だから、やめんかと言うて……こ、これっ！　毛を引っ張るでない！)』
　リリーがわいわいと賑やかな入口の方をチラリと振り返る。
「ベルもあっちで大人気ね。もうっ、隅に置けないんだから」
　リリーはちょっとだけ不満そうに頬を膨らませて零し、再び目の前のウサギに目線を戻した。
「へへっ、もふもふで真っ白、可愛い！」
「……おかしいわね。こんな子うちにいたかしら？」
　女性スタッフが漏らした台詞に、ピクンと俺の肩が揺れる。
「ん？　お姉さん、なにか言った？」
　ウサギに夢中のリリーは彼女の言葉を聞き逃したらしく、小首を傾げて見上げる。
「いえ、なんでもないの。きっと昨日のうちに補充をかけたのね。……さぁ、それよりさっそくウサギさんを撫でてみましょうか。ウサギさんを驚かせないように、まずはそっと背中に手を当ててあげてね」
「うんっ！」
　リリーは元気よく返事して、そっと、そーっとウサギに向かって手を伸ばす。