今日から騎士団長の愛娘!?~虐げられていた悪役幼女ですが、最強パパはわたしにメロメロです~
 突然、周囲の空気がキーンと張り詰める。直後、リスが超音波みたいな耳障りな声で鳴いたと思ったら、方々で子供たちの悲鳴が響き渡る。
 その瞬間、俺の胸を支配したのは恐怖だった。
 ……リリー! リリーは無事か!?
 血が沸騰したように全身が熱くなる。かつて覚えたことのない焦燥に駆られながら、リリーの姿を探し求めた。

***

 パパの制止を振り切って、木の下をくぐった私は、エリア内をひとりしょんぼりと肩を落として歩いていた。
 段々と入口から離れ、お客の姿はまばらだった。周囲の木々には譲ってしまった白リスさん以外にも可愛らしいリスたちがいたけれど、新しい子を選ぶ気にはならなかった。
「ぅうううっ。あの子があんな風に乱暴に扱うなら、白リスさんを譲るんじゃなかった。……ごめんね、白リスさん」
 だけど、自分から『交代しよう』と言った手前、やっぱり返せとも言えなくて……。結局、あれ以上見ていられなくて、逃げてきた。
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