今日から騎士団長の愛娘!?~虐げられていた悪役幼女ですが、最強パパはわたしにメロメロです~
 悔しくて、悲しくて、白リスさんにも申し訳なくて、ジンッと熱を持つ目尻を手の甲で拭った。
 右と左を交互に何度か拭い、おもむろに足を止めた。
 ……だめね、いつまでもうじうじして。
 パパのところに戻ろう。それで、勝手にひとりで先に来ちゃったことを謝って、一緒に別の動物のエリアに行こう!
 そう思い直し、一歩を踏み出しかけたところで前方を黒っぽいなにかが横切って、私からほど近い木の下に入り込んでいくのを見る。
 ……あれ? なんとなく既視感を覚え、踏み出しかけた足を止め、小さく首を捻る。
「今のって、どこかで……あ!」
 ボヤ騒ぎの日、パパたちの帰宅を待っている時に見た真っ黒いなにか! ろくに足音も立てない滑るような素早い動きが、あの時の黒いのに似てる気がする――!
 思い出した私は、黒っぽいなにかが入っていった木の下に向かう。
 あの木の根元ね! 足音を忍ばせて、そーっと歩み寄る。
 近くに寄ると、幹の後ろから黒くて長い尻尾がふりふりと揺れているのが見えた。
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