今日から騎士団長の愛娘!?~虐げられていた悪役幼女ですが、最強パパはわたしにメロメロです~
 パパの声を聞いたのと、逞しい胸にグッと抱き締められるのは同時だった。
 ――ザシュッ!
 私に衝撃は訪れなかった。だけど、耳にはたしかに鋭い爪がなにかを引っ掻くような音が届いていた。
 さらに鼻先を、むわっとした血の匂いが掠める。
「っ、パパ! 怪我をしたの!?」
 ガバッと顔を上げれば、心配そうに私を見下ろすパパと視線がぶつかる。
「ほんのかすり傷だ。それより、リリーは怪我をしていないか!?」
「私は平気……っ、それよりパパ! ひどい怪我だわ……!!」
 答えながら視線をパパの右肩のあたりに落とせば、かぎ裂きになって破れたシャツと、血を滴らせ見るも無残な状態になった肌が目に飛び込んだ。
 目にした瞬間、私は意を決して叫んでいた。
「魔粒子のみんな、もうひとつお願い! 今回の一件でパパや子供たちが負った怪我を、治してあげて欲しいの!」
 さっきみたいに、みんながひとつになれば、きっとできると思った。
《いや、それは……》
《嬢ちゃん、さすがに癒しの魔力はマズいぞ》
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