さよならとつぶやいて、きみは夏空に消えた
 思い出そうとすると、頭が痛くなる。それでも考えつづけると、次第に脳内に霞がかかってくる。

 心の底にある曖昧な空洞をいとけない少女に言い当てられたように感じて、透は思わずホタルから目を逸らした。

「どうしてそれを……」

 遠くで雷が鳴っている。
 ホタルは透のつぶやきには答えずに、雷雲の影もない青空を見上げた。

「写真には、お父さんとお母さんとわたしが写っているの」

 せいぜい十歳くらいにしか見えないホタル。

「トオルに、その写真を一緒に探してほしいの」

 十五年前に売られた写真立てに入っていた写真。

 何かがおかしい。違和感が警報を鳴らす。
 十歳の少女と……十五年前の写真立て。時系列が狂っている?
 もしホタルの言うことが無邪気な嘘でないのなら、そこには何が写っているのか……。
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