さよならとつぶやいて、きみは夏空に消えた
「じゃあね、また来るね」
ホタルとは途切れがちに小一時間ほど話して、店舗の出入り口ではない住居用の勝手口から送り出した。
「あ、ああ。準備をしておくよ」
手を振るホタルに、どこに帰るのかは聞けなかった。聞いてはいけない気がしたのだ。
ホタルの両親は離婚して、今は祖父母と暮らしていると言う。それだけは聞いた。幼いころの透に近い境遇だった。
心の琴線に何かふれる。思い出しそうになるが、思い出せないもどかしさ。
ホタルと話して、まず写真立てを売った人物を探そうということになった。
筆まめな祖母のメモによると、そのひと、夕凪杏子は家財道具のほとんどを売り払って上京したらしい。東京での連絡先も書かれていた。
「明日が定休日でよかった」
透はそこにホタルを連れていくことを約束した。