さよならとつぶやいて、きみは夏空に消えた
 その時、青く晴れていた空が突然暗くなると、勢いよく雨が降りはじめた。夕立だ。

 ホタルは無事に家に着いただろうか……。

 雨粒が焼けたアスファルトを濡らし、埃くさい夏の空気が漂ってくる。
 子供のころ、遊び疲れて帰ってきた夏休みの匂い。濡れた髪をタオルで拭きながら麦茶を飲んで、驟雨を眺めている時の懐かしい匂いだ。

 言葉にならない喪失感が空っぽの胸にあふれて、透は縁側で雷を怖がる子供のようにうずくまった。



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