さよならとつぶやいて、きみは夏空に消えた


 十五年前の夏の一日。

 高原の街、古城市は七月としては珍しい真夏日だった。
 痛いほど烈しい太陽の光。ちらちらと輝きながら清らかな音を立てて流れる渓流。日射に焼けた河原の石ころ。

 丸い石から平らな石へ、鹿の子のように裸足で飛びまわるきみ。

『あっつい!』

 石の熱さに悲鳴を上げる少女。

『透もこっちにおいでよ』

 蛍が、笑った。





 透は思い出した。
 すべてを。





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