私の願いが叶う恋



「彼氏じゃない〜!!」



ころころ変わるこの表情に弱くて、いつもほだされちゃうけど、今日こそハッキリ言わなきゃ。




「あのね、私、光とは付き合えないよ。光は私にとって弟みたいなものなんだから。それに、髪は黒のがかっこよかったぞ。」




光は一個下の幼馴染で、中3。
昔から変わらずずっと仲良しだけど、弟以上でも以下でもない。




受験生なのに勉強してる様子も全然ないし、



ヤンチャな友達の影響か、最近は髪まで染めて、どんどん派手になっていく。







「あっそ。」



さっきまでふざけていた光が、口を尖らせてそっぽを向いて黙り込む。







うーん、拗ねた・・?






「・・黒髪に戻すから。」



少しの沈黙の後、口を開いたと思ったら、私の指に自分の指を絡めながら耳元に口を寄せた。



「ねぇ、俺のどこが弟みたいなの。」


囁きと同時に、急に耳に痛み刺激が走った。


「いっった!!え!?噛んだ!?」





慌てて光を引き剥がすと、




今度は、光は真っ直ぐに私の目を見つめていた。






「・・もうっ!!光なんか置いて行くから。」



無意識に、視線が噛み付いた光の唇に向き心臓がドクンッと脈打つのを感じた。




いやいや、違う違う。今のは驚いたからで・・。落ち着け。




「梨沙が好きだよ。簡単に諦められるような気持ちじゃないから。」



焦茶色のサラサラな前髪から垣間見える瞳が、本気で私を好きだと伝えてくる。



「今日、学校終わったら電話する。」


光が私の頭を雑にワシャワシャッと両手で撫でた。



「ちょ、ボサボサ・・!」


頭に乗せられた手を振り払うと、光はまた無邪気な笑みを見せ、先を走り出した。



「梨沙のが足遅いだろ。俺を置いてくなんて無理〜。」


昨夜の雨でできた大きな水溜りも、長い足でスキップして乗り越えていく。




「も〜っ、車に気をつけなさいよ〜!!」


嵐のように過ぎゆく光の背中を、母のように見守った。



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