イケメン御曹司が初めての恋をして、天然でかわいい女の子に振り回されちゃう話。
「あの、わざわざお迎えに来ていただきありがとうございます」
運転手さんに向かって声をかける。
ミラー越しに目が合った。
優しげな目元に、わたしまで笑みがこぼれた。
「いいんですよ。最近は要様が歩いて学校へ行かれるので、専属運転手として寂しかったんです」
「え、先輩?」
もしかして、わたしが言ったせいで……?
先輩には先輩の決まりだったり、行動パターンがあったのに、わたしがなにも考えずに言うから……。
「歩くのもいいよなって思ったんだよ。ゆっくり景色見れるし」
「先輩……」
「教えてくれてありがとな」
先輩がわたしの顔を覗き込んで微笑むから、ドキッと胸が高鳴った。
けど、それはなかなか止まらず、ずっとドキドキしている。
「……はい」
「でも、優乃がいたらもっといいからさ、また一緒に帰ろう」
「はい!ぜひ!」
「……よし。約束とりつけた」
「え?」
「あ、なんでもない。着いたらどれ乗りたいんだ?」
車の中で伊月先輩とたくさん話しながらテーマパークへ向かう。
わくわくが膨らんで、ずっと楽しみだったのがもっと楽しみになる。