イケメン御曹司が初めての恋をして、天然でかわいい女の子に振り回されちゃう話。
心臓がまた、ドキドキと音を立てる。
どうしてだろう。
先輩のきれいな顔を見ているから?
まっすぐな瞳にとらえられて目を逸らすことができない。
「伊月先輩……?」
名前を呼ぶと絡められた指にきゅっと力がこもる。
ドキドキと、心臓の音が加速していく。
「……優乃」
「はい、どうしましたか?」
わたしをじっと見つめる先輩は、ゆっくりと息を吐きだして気持ちを整えているように見える。
お互いになにも言わずに数秒間、視線だけが交わっている。
静かな夜に、わたしの壊れそうな心臓の音だけが大きく響いている気がした。
「……好きだ」
「……え?」
「優乃が好きだ」
先輩の強く紡がれた言葉に、ずっとうるさかった心臓がもっと大きく音を立てた。
好き、って……先輩がわたしのことを?
いや、ちゃんと『優乃が好きだ』って言ってくれたから、そうなんだろうけど。
驚いて瞬きも忘れて先輩を見つめた。