桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

だんだんと花火が打ち上がる時間が近づくにつれ、たくさんの人でごった返してきている。

……なんか、周りからの視線が痛い。

琉輝くんと美菜は美男美女。

それに‥‥‥。

「えっ、待って。あの男の子、めっちゃイケメンじゃん!」

陽向は物凄くかっこいいから周りの女子たちが振り返って見ている。

「ほんとだ! あんな人が彼氏だったらいいのにな〜」

「それな! 一生自慢できる!」

どこに行っても陽向はモテる。

それは仕方ないことだけど、なんだかモヤモヤしてしまう。

それに、こんな私なんかが陽向の隣にいていいのかな?

思えば思うほど、自分に対して不安になっていく。

俯き加減で歩いていると、少しだけみんなから距離があいてしまった。

「蒼」

陽向が振り返った。

「あっ、ご、ごめん。今、行くから‥‥‥」

そう歩みを速めようとしたら、逆に陽向が迫ってきて。

「蒼、俺の傍から離れないで」

私の手を握ってくれた。

心臓がうるさいぐらいドキドキして、恥ずかしくて顔をあげられない。

陽向と手を繋ぐのはこれで2回目なのに、雨宿りするために手を取ってくれた1回目の時よりも胸がなんだか騒がしい。

私の手なんかより比べ物にならないぐらい大きな彼の手。

行き交う人混みの中で、はぐれないようにしっかりと握って優しく私をリードしてくれる。

「あ〜ぁ、彼女持ちだったのか。残念」

彼女じゃないのに‥‥‥。

でも、陽向の特別な人になりたいと今は思うんだ。
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