桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「ここだとかえって目立つから、ちょっと場所移動しよう」

「うん」

私もそのほうがいい。

陽向のかっこよさがあまりにも目立ってしまうから。

「琉輝、美菜。ごめんけど、俺たち抜けるから」

陽向が美菜たちに声を掛ける。

「えっ? どこ行くの?」

「んーっと、その辺」

美菜の問いに、テキトーに答える陽向。

場所移動しようって言ったのに、場所決めてないんだ‥‥‥。

「その辺ってどこ⁉︎」

琉輝くんが速攻聞いてきたのを、陽向は軽くあしらう。

「まぁ、そんなことはどうでもいいから。琉輝と美菜、あとは2人で楽しんでおいでよ」

「もう、陽向め〜!」

琉輝くんは怒っていて、美菜は私に近づくなり耳元に手をあて囁く。

「蒼、あとでたーっぷりお話し聞かせてね」

「‥‥‥!」

美菜は不敵な笑みを浮かべて私にウインクをした。

‥‥‥見られた。

陽向と手繋いでいるの見られた!

恥ずかしくて慌てて手を離そうとすると、逆にぎゅっと握り返される。

「行こう、蒼」

「あっ、う、うん」

陽向に先導してもらいながら、来た道を戻る。

「人多いから気をつけて」

私のことを気遣ってくれるところとか、陽向の優しさが滲み出る。

人混みを掻き分けて、2人して会場を抜けた。

今もまだ、手を繋いでくれている。
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