桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

少し歩いて着いた先は、人通りが少ない歩道橋の上。

「ここなら人がいないから安心して花火見られるね」

「うん」

さっきは、場所決めてないとか言ってたのに、本当はちゃんと考えてくれてたんだ。

「さっきは、めっちゃ焦った」

「えっ?」

「だって、横にいるはずの蒼がいなかったから。それにさ、他の男たちがずっと蒼のことチラチラ見てたし」

「えっ、え〜⁉︎」

「蒼は可愛いから学校でも狙っている人たちが多いんだよ」

「ちょ、ちょっと、うそやめてよ」

「うそじゃないよ。本当のことだから」

そう真剣な表情で話す陽向。

「じゃ、じゃあ、どうして陽向は私の隣にいてくれるの?」

恐る恐るそう尋ねると、満面の笑みと共に返ってきた言葉。

「それは、俺にとって蒼は大事な人だからだよ」

‥‥‥“大事な人”。

それって、友達として大事な人?

それとも‥‥‥。

その先の言葉は、上手く言葉にならなかった。
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