桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
第3章 色付く紅葉とともに
きみの隠された過去
楽しかった夏休みが終わり2学期へと突入した。
なのに、私はいまだ夏祭りの時の余韻が消えず気持ちがふわふわしている。
「おはよう、蒼」
教室に入ると、陽向はもうすでにいて笑顔で挨拶をしてくれる。
「お、おはよう。陽向」
自分の気持ちに気づいてしまってから陽向とうまく話せない。
「今日から、また学校始まったね」
「そ、そうだね」
いつもと変わらず接してくれる陽向に、気持ちを悟られないよう平静を装うのに必死。
「そういえばさ、昨日サイトで見たんだけど、コンビニスイーツ新しいの出たんだって、ほら」
陽向はそう言って、スマホの画面を私に見せた。
覗き込むと、“栗のシュークリーム”と商品名が記載されていて、シュー生地の間にカスタードクリームと栗が丸々1個入っているものだった。
「とっても美味しそう!」
私はスイーツが大好きで、陽向も甘党で似たもの同士。
そういえば、夏休みの時も陽向と2人で何回かカフェ巡りしたことがあった。
コンビニのスイーツも新商品がでたら買いに行ってどちらかの家でまったり堪能することがお決まりになっていた。
「これ期間限定なんだって。今度の休日、一緒に買いに行かない?」
そんな彼の誘いに、スマホの画面から陽向のほうへ顔を向けるといつの間にかこんなにも距離が近くなっていたことに今更気付いて顔が熱くなる。
……どうしよう。
近くには、友達と喋っているクラスメイトの声が聞こえるのに、全然耳には入らない。
恥ずかしさのあまり、口をもごもごさせてしまう。