桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「俺の両親はこの前言ったとおり、父さんは医者で、母さんは看護師。でも、その日、大切な人の命を守れなかった」
だから、この前聞いた時、『全然凄くないよ』と言ったんだ。
「必死に措置はしてたんだけれど、治療室に運ばれた時には、もう間に合わなかったんだ。それに‥‥‥」
その話の後が気になったのに、そこで陽向はなぜか言葉を止めて悲しい顔で私を見た。
なにか言いたそうで、でもなにか話しづらそうな表情。
少しすると、陽向はゆっくりと私から視線を外し自分の手元を見た。
「俺は‥‥‥」
悲しみや後悔を全部手のひらに込めるようにギュッと握りしめながら陽向は言った。
「俺は、あの子になにもしてあげられなかった。助けたかったのに、守ることもできなかった‥‥‥ただ、泣き崩れるあの子を抱きしめることしかできなかった」
‥‥‥あの子。
それはきっと、琉輝くんが言っていた子なんだろうな。