桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

なのに‥‥‥。

「待って、蒼!」

なんで、追いかけてくるの⁉︎

走って陽向から逃げようとするが、すぐに距離は縮まり、いとも簡単に腕を掴まれた。

「離して!」

そう伝えても、陽向は全然離してくれない。

どんなに、手を離してくれようと頑張ってみるけれど、しっかりと腕を掴まれていて男の人の力には敵わない。

痛い‥‥‥。

もう、腕も心も痛いよ‥‥‥。

「蒼、聞いて! 俺が好きなのは」

「聞きたくない‼︎」

必死な陽向の言葉を遮った。

「もう、なにも聞きたくないよ! お願いだから、これ以上私に優しくしないで!」

怒りを陽向にぶつけてしまった。

静寂な廊下に私の声が響き渡る。

「‥‥‥!」

もちろん陽向はとても驚いていて、自分でもこんなに声を荒げたことに今更ながらに驚いてる。

「ご、ごめん」

ゆっくりと手が離れた。

掴まれていた場所は、ほんのりと赤くなっていた。

「‥‥‥私の方こそ、ごめん」

それだけ伝えると、ゆっくり踵を返し、陽向に背を向けて歩き出した。

あぁ、やってしまった‥‥‥。

好きな人を傷つけるなんて最低だ。

私って、もう、なにやってるんだろう。

溢れ出しそうな涙を必死に我慢する。

泣いてる姿なんて、陽向に見られたくない。
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