桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
あの日の出来事
【陽向side】
「蒼、聞いて! 俺が好きなのは」
「聞きたくない‼︎」
蒼は、俺の言葉を遮った。
「もうなにも聞きたくないよ! お願いだから、これ以上私に優しくしないで!」
蒼のその言葉が物凄く胸に突き刺さって、こんなにも蒼が怒ったことにびっくりで‥‥‥。
ーー『来ないで』
あの時とは違って明らかの拒絶で、動揺して思わず蒼の手を離してしまった。
それに、手加減を忘れて握っていたせいか掴んでいた部分はほんのりと赤くなってしまっていた。
その瞬間、俺はやってしまったと後悔した。
蒼を傷つけてしまった。
俺のせいで、蒼を泣かせてしまったんだと。
その元となる原因が分からないけれど、俺が関係しているということは蒼の態度を見る限りはっきりと分かった。
蒼は、俺に背を向け離れていく。
泣きそうにしている蒼を追いかけることなんて今の俺にはできなくて、その場でただ茫然と立ち尽くすしかなかった。
‥‥‥手を離したくなかった。
手放したくなかった。
大好きなきみをーー。