桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

* * *

小学3年生になった俺は、病院勤めの親が久しぶりに休みが取れて、休日、家族みんなでこの町に新しく出来たばかりの水族館に来ていた。

水槽の中にいる魚たちをひと通り見終わった頃、イルカショーが始まる時間になり屋外にあるイルカが泳いでいるプールへと向かった。

まもなくして、イルカショーが始まった。

体をクルクル回転したり、輪投げを1つも落とさずにキャッチするイルカたち。

飼育員さんの合図に合わせて勢いよく水中へ飛び出して、空高くジャンプするイルカたちに俺も合わせ観客のみんなが見入っていた。

そろそろ終盤に差し掛かった時、イルカの飼育員さんが言った。

「ショーの最後にイルカとふれあいができます! したい人はいますか?」

たくさんの人たちが挙手をする。

「陽向も手を挙げたら?」

横にいた母さんが言ってきたけど、即断った。

「いいよ。恥ずかしいし」

そう言って、手を挙げずにいると‥‥‥。
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