桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「蒼、どうした?」
俯いている私に気付いたのだろう。
陽向くんが不安そうな顔でこちらを見つめている。
「ううん。なんでもないよ」
心配させないように言った言葉が、逆に心配させてしまったようだ。
「蒼、1人で抱え込むのは良くないよ」
「陽向の言う通り、なにかあるんだったら俺たちが相談に乗るよ」と琉輝くん。
「そのために私たちがいるんだから」と美菜ちゃんまで。
3人の優しさがひしひしと伝わってくる。
「ありがとう。でも、大丈夫だよ」
そう言うと、美菜ちゃんと琉輝くんは安心した表情を浮かべた。
だけど、目の前にいる陽向くんは不安そうな顔のまま私を見ていた。
‥‥‥大丈夫。
私は、大丈夫。
あの日から、何度も自分に言い聞かせた。
そうしないと崩れてしまいそうで。
人に頼ったりなんてしたら、私の心が壊れてしまいそうで。
だって、今日はあの日から7年。
お父さんの命日でもあるんだ。
ずっと忘れもしない。
一瞬にして世界がガラリと変わってしまった、痛くて苦しいあの日のことをーー。