桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
イルカショーが終わった後も、頭の中には蒼ちゃんのことばかり。
蒼ちゃんは、どこの小学校に通っているんだろう?
俺が通っている小学校では見かけたことがない。
あんなにも可愛かったら、すぐに学校内の噂にもなるだろうし‥‥‥。
だとしたら、別の小学校かな?
また蒼ちゃんの可愛い笑顔見てみたいな。
そんなことばかり考えていて、水族館を出る頃には、もうすっかり夕方になっていた。
家族と一緒に駐車場に向かって歩いていたその時、少し離れた交差点で信号待ちしている蒼ちゃんの後ろ姿が見えた。
お父さんとお母さんの間にいて、なにやら楽しそうに話をしている。
俺は、また蒼ちゃんを見ることができて嬉しかった。
「あっ! 信号青になったよ!」
蒼ちゃんの明るい声が聞こえてきて、思わず笑みが溢れる。
しかし、それは一瞬にして消えた。
遠くの方から信号無視した黒いワゴン車が物凄いスピードで走ってきているのが見えたから。
その車に気付かず、蒼ちゃんは横断歩道に足を踏み入れてしまった。
ダメだ‥‥‥!
渡っちゃダメだ!