桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「ちょっと、陽向⁉︎」
「どこ行くんだよ? 駐車場そっちじゃないだろ?」
両親の声を無視して俺は、蒼ちゃんの元へ駆け出す。
距離があって、間に合うかどうか分からない。
けれど、俺はとにかく必死だった。
「蒼ちゃん! 今すぐその場から離れて!」
すると、俺の声が届いたのか蒼ちゃんは振り返ろうとする。
蒼ちゃん、そこにいてはダメなんだよ!
ーーブゥォォォォ。
突っ込んでくる車の音で、ようやく蒼ちゃんはその車に気づいた。
だけど、もう車が目の前まで迫ってきている!
蒼ちゃんとの距離まで、あと少しなのに‥‥‥!
「蒼‼︎ 危ない!」
すぐさま蒼ちゃんのお父さんが駆けつけ、怯えていて動けずにいる蒼ちゃんの肩を強く押して突き放したその瞬間‥‥‥。
キキィィィ‼︎ ドンッ! ガシャン!
物凄い音が響き渡った。
蒼ちゃんのお父さんがその車に撥ねられてしまったのだ!
「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥っ」
目の前で、その一部始終を見てしまった俺は、息を切らしながらその場で呆然と立ち尽くした。
辺りには、思わず目を逸らしたくなるほどの無残な光景。
車の前方部分はグシャグシャになっていて、あちこちに破片が地面に散らばっている。
運転手の男性は無事なのか、車から出てきてオロオロとしている。
歩道のところには、倒れている蒼ちゃん。
そして、車から少し離れた場所には身体の至る所から血を流して横たわっている蒼ちゃんのお父さん。
僅かに意識があるみたいで泣いている蒼ちゃんのお母さんになにかを伝えている。