桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「陽向、なにしてる? 急ごう!」

いつの間にか、俺の両親がこちらに来ていて、母さんに肩を軽く叩かれて俺はハっとする。

ぼーっとしている暇なんてない!

これは、一刻を争う事態なのだ!

俺たち家族は、急いで蒼ちゃんたちの元へ向かった。

「大丈夫ですか⁉︎」

「そこのあなた、早く救急車を呼んで下さい!」

傷の手当てをしながら、近くでオロオロとしている運転手に電話するよう呼びかける両親。

俺の父さんは医者で、母さんは看護師だ。

2人に蒼ちゃんのお父さんを任せて、俺は倒れている蒼ちゃんの元へ急いで駆け寄った。

「蒼ちゃん」

名前を呼ぶけど反応がない。

えっと、こういう時は、まずは呼吸を確かめる。

医者である父さんから何回も教えてもらったことを思い出しながら初めて実践してみる。

蒼ちゃんの胸部や腹部の動きを見ながら呼吸できてるか確認する。

‥‥‥大丈夫。

ちゃんとできてる。

「蒼ちゃん!」

もう1度、蒼ちゃんの名前を呼んだその時‥‥‥。
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