桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「あなた! 目を覚まして! お願いだから、逝かないで!」
蒼ちゃんのお母さんの泣き叫ぶ声が聞こえて振り返ってみると、父さんが蒼ちゃんのお父さんの胸に手を当て必死に圧迫をしていた。
‥‥‥心肺蘇生。
とても危ない状態だ!
俺は、すぐに目の前にいる蒼ちゃんにひたすら呼びかけた。
「蒼ちゃん! 蒼ちゃん!」
何度も何度も蒼ちゃんの名前を呼ぶ。
起きて欲しくて、今すぐ目を覚まして欲しくて‥‥‥。
そんな願いを込めて蒼ちゃんの右手を握った。
すると、僅かだか握り返してくれたことが分かった。
俺は、息を大きく吸い込んだ後、ありったけの声で叫んだ。
「起きて、蒼ちゃん‼︎」
すると‥‥‥。
「‥‥‥んっ」
俺の声が届いたのか、蒼ちゃんはゆっくりと目を開けた。
「良かった。目を覚ましてくれて」
「‥‥‥?」
安堵する俺とは違って、きょとんとした蒼ちゃん。
「そっか、私‥‥‥」
でも、すぐにさっきのことを思い出したのだろう。
蒼ちゃんは、冷たいアスファルトから体を起こそうとして、俺は蒼ちゃんの背中に手を当て体を支えた。
「‥‥‥っ」
途中、歪めた顔したからどこか怪我しているんじゃないかって思い見てみると、蒼ちゃんの右膝に傷ができていて血が少し滲み出ていた。
「大丈夫? 痛くない?」
「‥‥‥う、うん。大丈夫」
そう言った蒼ちゃんだけど、俺には痛みに我慢しているようにしか見えなかった。
ふと足元には、蒼ちゃんの物なのか水色のイルカのキーホルダーが落ちていた。