桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「それより、私のお父さんは?」

蒼ちゃんにそう聞かれて、俺はなにも答えることができなかった。

どう伝えればいいのか分からなかった。

そんな俺を不審に思ったのか蒼ちゃんはゆっくりと辺りを見渡した。

さっき見た時よりも、身体の至る所から大量の血を流して横たわっている蒼ちゃんのお父さん。

いまだ、意識が戻らないのか父さんが蒼ちゃんのお父さんの胸に手を当て必死に心肺蘇生をしている。

それを見た蒼ちゃんの目から、一筋の涙が流れた。

「お父さん‥‥‥」

蒼ちゃんは、ぽつりと言葉を漏らし、大きく息を吸い込むと‥‥‥。

「お父さん‼︎」

蒼ちゃんは、大きな声で叫んだ。

けれど、蒼ちゃんのお父さんは目を一向に開かない。

そして、蒼ちゃんの目からたくさんの涙が零れ落ちる。

「私のせいで、お父さんが‥‥‥」

違う。

「それは違うよ」

すぐさま、蒼ちゃんの言葉を否定した。

「で、でも‥‥‥!」

なにか言いたげに俺を見る蒼ちゃん。

俺は、その蒼ちゃんの目をしっかりと見ながらゆっくり言葉を投げかける。
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