桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
* * *
ーー今から7年前。
小学3年生になったばかりのある日の休日。
お気に入りの白いワンピースに、この前、お父さんに買ってもらったベージュ色のカーディガンを着て朝から胸が高鳴っていた私。
それに、今日はどうしても行きたいと思っていた場所に行くから楽しみでいっぱいだった。
家族と一緒にしばらく電車に揺られながら向かった先は、隣の県のとある町。
電車から降りると、そこは住んでいる場所とは比べものにならないぐらい、辺りにはいくつものお店や大きなビルが建ち並び、たくさんの人や車で行き交っていた。
それに、満開に咲き誇った桜があちこちに並んでいる。
ピンク色の花びらは、ずっと見ていたいなと思うぐらいとっても綺麗で、町全体の雰囲気を明るく照らすだけではなく、私の心もより一層軽やかな気持ちにさせた。
その町の光景にはしゃいでいると、お母さんたちはどこか懐かしそうに眺めていた。
「蒼は、この町に来るの初めてだもんね」
「えっ? お父さんとお母さんは初めてじゃないの?」
お母さんの言葉が気になってそう尋ねると、お父さんが笑顔で教えてくれた。
「昔な、この町に住んでいたんだよ。お母さんと2人で」
「そうなんだ!」
私にとっては、初めて来る町で見る全てがとても新鮮だった。
しばらく景色を眺めながら歩いていると、この前、新しく出来たばかりの大きな水族館が見えてきた。
この水族館こそ、私が行きたかった場所。